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会長挨拶・コラム COLUMN

平成31年2月:新たな時代に

第13代会長 栗原 勝美 先生

会長 栗原 勝美

新たな時代の幕開けに合わせるように、日本理療科教員連盟も本年4月から全国7支部と本部による新組織が船出します。生みの苦しみはありましたが、新しい組織として意義のある活動ができるよう努力して参る所存です。

7支部には、各地域の実情に合わせた教育課題や進路の課題があると思います。各地域の校長会や保健・医療・福祉・産業の関係者と連携し、それぞれの課題が少しでも改善できるよう、活発な活動を期待しています。また、本部は、専門部を再編し、スリム化を図る一方、事務局に多くの仕事が割り振られています。メール等を活用し、会員の皆様の協力を得て、滞りなく組織の運営ができることを願っています。新しい組織体制になっても、関係団体との連携・強調を大切にするとともに、様々な点で視覚障碍者にとって不利益にならないよう、理解と協力を求めていきたいと思います。

平成30年度の医療保険改正により、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうでも療養費の受領委任払い制度が導入されました。柔整に遅れること48年だそうです。受領委任払い制度が導入されるに当たり、「適正な制度の運用と不正対策の強化」のために「施術管理者」を置くこととなりました。今後は「施術管理者」を配置していないと、療養費を取り扱うことができなくなります。

あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうにとって、受領委任払い制度の下で保険を取り扱うのは初めてのことです。「施術管理者」講習会が始まるまでは、指定の様式にしたがって届け出を出せば受領委任払い制度の下で療養費を取り扱うことができます。

現在、東洋療法研修試験財団や、あはき等法推進協議会では、来年4月からの「施術管理者講習」の実施に向けて準備を進めています。既に始まっている柔整に倣えば、2日間・16時間程度の講習になるものと思います。私は、講習の内容そのものは余り心配をしていません。ただ、この講習を受講するには一定の受講要件を満たしていなければなりません。この受講要件を、開業している視覚障害を有するあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師が満たすことができ、憂いなく「施術管理者講習」を受けることができるのか、憂慮しています。柔整では、3年間の実務経験(療養費を取り扱っている接骨院で勤務し、保険の取扱いの実務を経験する)が受講要件です。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師にとって、柔整並の要件を満たすのは困難です。

現在、検討中の受講要件は、保険を取り扱っている治療院で「10症例程度保険の取扱いについて実務を研修する。」というものです。しかし、この要件ですら、視覚障碍者にとっては厳しいのではないかと考えています。治療院開業者の8割以上が一人で開業しています。また、開業している視覚障碍者の中で積極的に保険を取り扱っているのはわずかに17%余りです(藤井らの調査)。このような実態の中で視覚障碍者が「施術管理者講習」の受講要件を満たす研修を受けることができるのか、皆様はどのように感じられるでしょうか。

視覚障碍者にとって就労問題が大きな課題であることは言うまでもありません。特に、開業の実態は厳しいものがあります。これから治療院を開業するには、保険の取り扱いと自由施術(料金を自由に設定して行っている保険を適用しない施術)を2本柱として経営することが成功のモデルではないかと考えています。受講要件の研修を受ける場所がなく、「施術管理者」に慣れなければ、視覚障碍者の治療院開業は、なおさら厳しくなります。

以前から、盲学校を卒後研修の場として開放して欲しいとの声があります。しかし、「開かれた学校づくり」というかけ声はあるものの、実態としては管理が厳しくなっているようにも感じます。一筋縄ではありませんが、盲学校の臨床室で保険を取り扱える仕組みを検討し、そこで、「施術管理者講習」の受講を希望する卒業生を受け入れることができないか、関係者の理解と知恵をお借りして検討してはどうかと思います。盲学校を研修の拠点としていくことも、就労問題解決の大きな手立てになるのではないでしょうか。

年度末を迎え、国家試験の対応、新卒者の進路等ご多忙のことと存じます。思いやりのある温かい気持ちで、生徒に接することができるよう心がけたいと思います。心にゆとりを持ち、新たな時代に理療教育の再生を目指して頑張りましょう。