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会長挨拶・コラム COLUMN

令和3年2月:新執行部に期待

第13代会長 栗原 勝美 先生

会長 栗原 勝美

新型コロナウイルス感染症の終息が見通せないまま2021年が明けました。本年が、明るく穏やかな年になることを心から願っています。

この1年、コロナ禍の中で理療教育においても新しい生活様式が求められました。極めて厳しい状況ではありましたが、オンライン授業や感染予防対策を徹底した実技授業の実践等、先生方の努力により何とか生徒への学習保障がなされたことに改めて感謝申し上げます。本連盟でも、会議や研修会をオンラインで行いました。外部との折衝など課題が残りましたが、デジタル化を見据えて着実な取組みや検証が行われたことは、今後に向けて大きな成果となりました。新たな時代に対応した理教連改革を更に進めるきっかけになるものと期待しています。

さて、私は、今春の3月末で会長を退任することとなります。会長として活動したこの6年間を振り返ってみますと、まず、2016年の第65回総会で、懸案であった「組織改革」に関する議案がわずか1票差で承認されたことが印象的です。5年間丁寧に議論を重ね準備し、4回目の提案でようやく承認されたものでした。この組織改革は、1952年の本連盟発足以来続いてきた会員と本部(執行部)からなる体制を、会員・全国7支部・本部(執行部)の体制に改め、各地域の理教連活動を活発にして現状の課題に対応しようというものです。船出は難産でしたが、実際に動き出してみると、以前に比べて会員一人ひとりの関わりが強くなり、各地域の活動も徐々に活発になっているように感じます。

一方、理療教育は、生徒数減少に歯止めがかからず、消滅の危機に立たされています。理療の魅力をアピールし、生徒募集を工夫しても、眼科医療の進歩や生産年齢人口の減少により生徒数はなお減少するものと思います。10年後、20年後には、200名から300名程度になるかもしれません。その時、理療教育を守り、視覚障害者の理療を発展させていくのは理教連の使命です。

本年度立ち上げた「将来構想検討委員会」には、10年後、20年後の姿を展望し、Society5.0の社会を生きるあはき師を想像して、大胆な改革案を示していただければと考えています。丁寧に議論を進めて合意形成を図り、改革の痛みを乗り越え、未来の視覚障害者に理療という職域を残すために、改革案が実現するまで粘り強く取組まれることを期待しています。各支部、各学校におかれましても、フューチャー・デザインの手法で、今、何をしなければならないのか熟考していただきたいと思います。そのような取組みを続けることで、将来に向けて何をすべきなのかが見えてくることでしょう。

また、視覚障害者の理療の存在が、国民に知られていない現状を変えることが視覚障害者の理療を復活させるために不可欠と考えています。その意味で、啓発推進委員会の役割は大きなものがあります。様々な形で啓発を進め、視覚障害者の理療に光明が見いだせるよう期待しています。

更に、研究推進委員会の役割を継承する「研究倫理委員会」を新たに立ち上げました。あはきの研究では、特に、手技療法に関する研究が遅れています。盲学校の臨床室で施術を受けている患者さまの協力をいただきながら、手技療法のエビデンスを明確にする研究を進めることは価値のあることです。現在進めている研究を更に発展させ、臨床研究の機運を全国に広げることができれば、理療科の教員集団としての評価も高めることができるでしょう。現在では、倫理審査を通っていない研究はその成果を発表することも難しくなってきています。本連盟のような団体の中に研究倫理委員会を置いているのは稀ですが、私たち理療科教員の研究を推進していくために改めて活動を進めていただきたいと思います。

教科書の給付については、新たに「デジタル教科書委員会」を立ち上げその実現に取組んできました。文部科学省との折衝段階まで準備してきましたが、残念ながらコロナ禍の中で実現にこぎ着けることができませんでした。2019年12月に文部科学省が打ち出したGIGAスクール構想が前倒しされ、まず、ICT環境の整備が進められておりますが、現在のところ理療科は対象になっていません。GIGAスクール構想の中に理療教育も含めるよう早期に要望するとともに、関係者の熱が冷めないうちに電子教科書給付が実現することを強く願っています。

就労問題も解決の糸口がつかめないのが現状です。これまでの関係省庁との折衝では、治療院開業支援については「障害者雇用促進法」による納付金制度のような枠組みがなく、支援する組織もないこと、公的機関にヘルスキーパーを雇用できないのは、そのような業務が設定されていないからだということになっています。治療院開業支援の枠組みがないのであれば、これを新たに作らせるか、当事者自身が何らかの組織を作って支援するか等、摸索する必要があります。公的機関にヘルスキーパーを雇用するための法的裏付けがないのであれば、産業医が労働安全衛生法で規定されているように、ヘルスキーパーを労働安全衛生法に位置づけてもらうような活動が必要になるのではないでしょうか。

第29回あはき国家試験からあマ指師160問、はき師180問と出題数が増えました。数年後には、改めてあはき師学校養成施設認定規則検討会や国家試験あり方検討会が開かれ、それぞれ見直しが検討されるものと思います。それに備えて、早めに準備を進めることも必要でしょう。

あん摩師等法19条裁判は、東京・仙台の高等裁判所で「原告敗訴、国勝訴」の判決が出されました。大阪はこれからですが、東京・仙台では、すでに原告は上告しています。私たちは、最高裁の判決後も見据え、原告の様々な動きに注意して、真に19条が守られるまでこの戦いを続けていかなければなりません。その思いを、今一度確認しましょう。

4月からは、工藤滋会長による新体制がスタートします。課題は山積していますが、会員が一丸となってこれを支え、理教連が主体的に活動する中で理療教育が発展することを祈念しています。仕事や役割が自分を成長させ、関係の皆さんがそれを支援してくれることを信じて、尻込みせず、理教連の活動に参加してください。理教連は、教育、研究、諸制度を改善するための運動を3本柱として活動してきています。これからも、関係団体と協調しながら、バランスのよい活動がなされるよう重ねて期待します。

私は、これまで教育研究部長4年、事務局長4年、会長6年、計14年間執行部の一員として理教連活動に携わってきました。末筆ながらこの間賜りました皆様のご指導とご支援、ご協力に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。