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会長挨拶・コラム COLUMN

令和5年11月:持続可能な組織を目指して

第14代会長 工藤 滋 先生

会長 工藤 滋

19世紀のイギリスの自然科学者チャールズ・ダーウィンは、著書『種の起源』の中で、種の存続においては多様性が重要であることを述べています。ダーウィンは、創造説を否定し、自然淘汰説に基づく進化論を提唱しました。これは、生存に有利な性質を持った個体が生き延び、その遺伝子が子孫に受け継がれることによって、その有利な性質を有する種が繁栄・存続していくというものです。ただし、この自然淘汰はたった1つの基準によるものではないという点が重要です。例えば原始時代においては、動物を狩ることが得意な者は、生存に有利であると言えます。しかし、その点だけに着目して有能な狩人集団を形成した場合、なんらかの原因で狩猟対象の動物が絶滅してしまった場合、他の能力を持たないその集団は存続の危機に見舞われることになります。また、自然環境に適応した進化の過程を考えてみると、山に住む者は山での暮らしに特化した能力を、海辺で暮らす者は海での生活に特化した能力を高めていきます。この場合、山に住んでいる集団の中に、海での生活スキルを持ち合わせている者がいれば、大地震で山が崩れた際にも、海辺で暮らしていくことができますし、何事もなかったとしても生活範囲を山だけに限定せず、海辺などの他の地域にも広げていくことができます。つまり、多様性のある集団は、それだけで存続に有利だと言えるのです。

次にこれを、現代社会の組織に当てはめて考えてみます。同じような属性のメンバーで構成される多様性の乏しい組織では、皆が似たような発想をするため、革新的・発展的な意見が出にくくなります。大きな課題に直面した時、その打開策を発見できない可能性が高くなります。また、悪気はなくても、その組織にいない属性の者について、考えが及ばないために、適切でない判断をしてしまうこともあり得ます。

こうして考えてみると、社会環境の変化に柔軟に対応しながら存在し続け、多くの人達にとってよりよい提案をしていける組織には、多様性が不可欠であると言えます。

さて、本連盟の組織はどうでしょうか。本部と全国7支部からなる現在の組織体制は、2016年度の総会で可決され、準備期間を経て2019年度より完全移行して本格的に動き始めたものです。支部制にしたことで、より多くの会員が様々な活動に主体的に取り組む機会が増え、少しずつではありますが、支部の活性化が図られてきています。また、それらの活動を通じて、各支部で活躍する人材を知る機会が増えました。これは理教連にとって大きなメリットであると言えます。一方、限られた予算の中で、支部に十分な経費を配分しようとすれば、本部の経費を削減しなければならず、その結果として専門部と委員会の統廃合を進めることになりました。しかし、役員数にしても、専門部の数にしても、これらを削減するということは活動を中心的に進めている人達の数を減らすということになるので、将来の理教連を支える人材の育成という観点からは大きな課題を残すことになりました。

コロナ禍は視覚障害者の生活に様々な苦難を与えましたが、同時にWeb会議システムの活用を通じて、移動に伴う時間的、経済的、心理的負担を軽減できるというメリットももたらしました。特にこの中の経済的側面に着目すると、オンライン会議は移動に伴う経費を節約できるので、その予算で専門部の新設や部員の増加も可能になると気づきました。

そこでこの2年半、私は情報部の新設、若手や遠隔地在住の会員の役員への登用、専門部の部員増という形で、組織の多様化を進めてきました。その流れで今年度からは、理教連史上初となる女性の事務局長も誕生しました。理教連を、多くの人達にとってよりよい提案のできる組織として、将来にわたって存続させていくためには、数多くのそして多様な会員に理教連活動に関わっていただく必要があります。私は、そのための提案を続けていきたいと考えています。そうすることが、理教連を持続可能な組織にしていくことに繋がると思うからです。